お気に入りの街 by茶屋様

管理人のコメント
 以前長編レポートを頂いた茶屋様ですが、好評につき第二弾です。
火葬場レポートを絡めた茶屋様の文面に地元北九州に対する愛着が
そこはかとなく感じられる逸品コラムです。


以下、茶屋様のレポート

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今回はなんというかコラム風になってしまいました。
読みにくいかもしれませんが
よろしければ一読のほどお願い致します。


お気に入りの街


突然ではあるが、私は北九州が大好きである。



北九州と言えば最近なお発展する福岡市と比べ、元気がないという
イメージがあるけど、私の中ではそうではない。実は時々、夜中に当ても無く
車を走らせて見に行くものがある。
あの夜中でも明るい要塞のような八幡の工場群を見に行くのである。


口で説明するのは難しいけど例えば福岡でさえ真夜中となれば盛り場を除けば
静かになってしまう。それに対して
こちらは静かながら真夜中でも頼もしさを感じることが出来る。

  

例えば200号線を走って黒崎筒井町のJRとの交差から見る
三菱化成の工場あたり、
あの何を創り出しているのか分からないけれど複雑なプラントが明るく
照らされて存在感をしめし、その先にはの大きな煙突の目立つ三菱マテリアルと
皇后崎の下水処理場。そしておそらくかなたの八幡製鉄所
では高炉が深夜でもなお赤々と燃えているはずだ。

これらはむろん生き物ではないけど見てると生きてるような逞しさが
あって、理解してもらえないと思うけど、寂しいときにそれを見ると
なんか上手くいえないのだけれどほっとするのである。

そういえば子供の頃よく連れていってもらったのは黒崎そごうと
到津遊園だったし話し言葉の語尾につけるのは北九(州)風に 
「ちゃ」である。
今や勤めも買い物に行くのも福岡なのだが そういうわけで心の中の
どこかでは
北九州が好きだという気持ちは変わってはいないと思っている。



話が長くなりました。あと読み飛ばされた皆様、お待たせしました(笑)
その北九州市には島部を除いて2箇所の斎場がある。

その一箇所は八幡と若松の中間くらいの、言われなければわからない
だろうがこの奥に北九州市西部斎場がある。
最近は近くに大きなジャスコができて少し賑やかになったけど周りは
工場や公園に囲まれて夜などはひっそり閑としている場所だ。
ところでこの横の公園には何回か来たことがあるがどうやって見ても
斎場が見えない。
看板が無ければたぶん気づかないかもしれない。周りに住宅などが
無いのにあっぱれというくらい見事に隠してある。

  

↑この林の奥が西部斎場。
近くによっても中の様子がなかなかわかりません。
なお、上の山は北九州のシンボルで夜景がちかっぱいきれいな
皿倉山です。


(さてこれから中へ入ります。)



緑に囲まれて中が見えないと何度も言ったけどもちろん入口は必ずある。

公共の施設だから入っても構わないだろうけど場所が場所だけに遠慮無く
いくのは控えた方がよい。許されては無いけど見るほうにもそれなりの流儀が
必要であろう。

その流儀に当たるのかは不明だけど黒ネクタイはいつも車に置いてある。 

  

↑設けられた小道を行く。
右側に待合棟があるのだがよく見えない。
見事な配置だと思った。


さてニセ遺族となった私は正門とは別の裏口からおじゃまする事にする。
「関係者以外立ち入り禁止」とあるので勧めはしないがよほど騒がないかぎり
は大丈夫だと思われる。
目の先には設けられた小道が奥に続いていて、
右側には斎場の待合室と事務室があるがその間にも
木が植えてある。なるほどこれでは外から見えないはずだ。

  

↑火葬棟を見る
この方向からはあまり格好はよくない


なお進むと大きな建物に行きついた。これが火葬棟で、ここは私がとても
好きなデザインなのだがここから見ると不恰好にみえる。設計者も裏口から
入った人間のことまで考えてはいないのだろう。

その火葬棟に入るとすぐ目の前に炉のドアが入ってくる、しかも名札が付けて
あって、赤いランプが点っているので今まさに火葬中にちがいない。
その横を見渡すと扇形の火葬棟に合わせてカーブした壁に炉の扉が並んでいて、
そして終わるのを待っているのか、遺族らしき人がたたずんでいる。
しかしながら火葬中というのに不思議とその気配がほとんどしない。歩くたび
靴の音が響きそうだ。


このホールの屋根は高く明かり取りもありイメージとは裏腹でけっこう明るい。
私は建築に興味があるので写真を撮りたいのだけど遺族の方々の前でカメラを
向けるわけにはいかない。
申し訳無いがせめてと思いトイレの中から撮ってみた。この写真からここの
雰囲気がいくらか伝わっただろうか。



用を足してそのまま おすまし顔で端から端まで歩いた。特に文句を言われ
なかったので一応溶け込んでいるというところか。なお炉は4番炉もあって
欠番は無し。最大は15番だった。ちなみに東部斎場も同じ位の規模
だったと思うから30基で人口約100万人の北九州地区の火葬を執り
行っていることになる。

  

↑稼動中(左)と準備中の炉
準備中の炉は他にもあった。
ただし火葬中の炉を撮るのは少し気が引ける
ただ「安らかにお休み下さい」と願うばかりである。




外に出てその形をしばし眺める。近くから眺めるのは今回が初めてで、
その駐車場には車やバスが何台も止まっているが木や緑が多いので
さほどごみごみした印象は受けない。
緑をよく生かしてある設計である。

誰かが言ったのだがUFOみたいなというのがうなずける形で、今やこだわり
デザインの斎場も珍しくないがもう20年も前からこんなしゃれた物が建って
いたのは誉められるべきだと思う。

おそらくこのはしりは福岡市葬祭場ではないかと思う。 あちらも
30年近くになるがいまだ見劣りしないし、中にオブジェなどを配したのも
当時としては斬新だったはずだ。

↓(参考)福岡市葬祭場について。
ttp://www.lilic.jp/hibaru/

なお、その斎場のデザインをリードしたかもしれない福岡市葬祭場は全く
持って消え去ろうとしている。 
 ここで行政は杜撰だとかはもう書かない。得する人々が居て、力ある者が
造った流れはやすやすと変わりはしない。 飽き飽きだがそこに近いところで
飯を食ってる私には言う資格があるはずはない。



  

↑丸みを帯びたデザインの火葬棟
今でも見劣りはしない。
ホークスファンの私には福岡ドームにも見える…。





待合棟の脇に佇んでお茶を飲む。あっ!。携帯がいきなり震えてびっくりする。
普通の仕事の話しなのになんか悪いことをしているような話し方になって
結局中途半端になる。これではかけ直さなければならない。
それに遺族の方たちが当然居るのでこれで失礼しよう。やはり不謹慎過ぎる。


最後は火葬棟の裏手を回って帰ることにした。
さっきから色々見たが核心たる炉の裏は堅く閉ざされ窺い知ることは出来なかった。
おそらくこのページを見ている人は炉の機構とかに興味を持っている人が
多かろうからこの文がつまらなく感じることだろうか。

が、気持ちが通じたのか1箇所だけドアが開いていたのでちらと覗く。
でも見たところ何が何やら…。私にはただの工場にしか見えない。
そういえば先日築50年という焼き場をみたが、あのあからさまさとは
全く違って、なんというかぱっと見の人間には徹底的にタブーを隠したって
いうか無機質で何にも感じなかった。しかしこれは一つの進化だと思う。
建築や設備の改良により斎場のイメージは大きく変わったのは確かな
事実なのだ。


と、そこに建設現場で見る建設業許可証が貼ってあり
有名な炉メーカーの名前があった。補修工事中らしいが今は昼休みなので
人の出入りはない。そういえばたしかここの定期補修は毎回ここが随意契約
で落としていたはずだ。一回その設備が採用されれば付帯する作業が付いて
くるのだろう。
(注…東部斎場は別業者です)
でもこういうのはどうやって積算するんだろう、物価版に載ってるのだろうか。
おそらく合見積りでも出すのだろうが…。会計検査は…。
余計なことだけど誰かが居ればそれについて尋ねたいと思う。しかし残念ながら
今日は聞くべき人が見当たらない。

そのまま帰りはぎこちない歩き方のまま外に出る。途中、風向きが変わったのか
ふと一瞬独特の匂いがした。仏様の最後の自己主張ということはないだろうが
無事に天へと昇っていったのだろうか。


娑婆に出てまず最初に目に入ってくるのは道の脇で休む車の列だった。この世の
最後に行きつく場所のまん前が現人たちの休息の場になっているわけだ。
自分も思い当たるフシがあるので身につまされるが今日はそうしようという
気にはならななかった。
今日は暑いけど頑張ろう。そう自分に言い聞かせて
車を走らせる。 斎場の林ではもうセミが鳴いているようであった。


お気に入りの街 完。


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